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季節の移り変わりが早いです!!

季節の移り変わりが早いです!!

ことしは季節の進みが平年よりもかなり早いような気がします。春のチョウ、ギフチョウやヒメギフチョウは平年よりも10日くらい早く発生しているようです。季節は足早に初夏を迎え、これから本格的なチョウのシーズンとなります。引き続き当会ブログもご愛読下さい。情報提供やご意見・ご要望は事務局bsj(at)shobix.co.jpまでお気軽にお寄せ下さい!!
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台湾にギフチョウが居た!? [日本の蝶 / Butterflies JAPAN]

台湾にギフチョウが居た!?

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▲「台湾蝶類誌」第一巻 鳳蝶科(2018)

ごく最近、当会の副会長、理事を歴任されている台湾のYu Feng HSU教授が共著者となり、台湾産の蝶類を網羅する図鑑シリーズの刊行が始まった。まずアゲハチョウ科とシロチョウ科が刊行されたが、この中にちょっと目を引く標本が図示されているので紹介したい。

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日本虎鳳蝶 Luehdorfia japonica formosana Rothschild, 1918 (「台湾蝶類誌」第一巻 鳳蝶科(2018)より)

プレート20の最下段に図示されているのは、台湾、"TAIDONG Pref., Pushige "で得られたとされるギフチョウで、日本昆虫学の開祖として名高い昆虫学者、松村松年(1872-1960)のコレクションに由来し、現在は北海道大学のコレクションに所蔵されているものである。果たして台湾にギフチョウは居た(居る)のか? ロスチャイルドは1918年にギフチョウの台湾亜種formosanaを記載し、そのホロタイプ標本は大英自然史博物館に所蔵されているが、そのラベルには「1905年にE. Swinhoeから得た(標本)」というラベルが付されている。どういう経緯で「台湾産」とされるギフチョウがロスチャイルドの手に渡ったのか、それだけで推理小説のような面白さがあるのだが、いずれにせよ、かつて台湾にはギフチョウが産するとされていた時代があったことは確かである。

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▲山川黙 著 「原色新蝶類図」(1935)
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▲同著のギフチョウの記述

それは例えば戦前の書籍にも反映されている。山川黙(1886-1966)が一般向けに刊行して普及した蝶類図鑑「原色新蝶類図」(1935)でも、ギフチョウは「四国(!)、九州(!)、台湾」に産するという記述がみられる。このうち九州は「豊後」(Bungo)で得られたという記述があることに基づくものと思われるが、四国については出典が良く分からない。

こうした事実を丁寧に検証し、結論を出したのが当会理事の渡辺康之氏である。渡辺氏は国内外の文献と博物館所蔵標本を調べ上げ、著書「ギフチョウ」(1996、北海道大学出版会)にまとめた。この中で渡辺氏は台湾のギフチョウについては標本の産地に疑義があるために分布域には台湾を含めないと結論づけている。

冒頭で紹介した台湾の図鑑でもこの見解は支持されているので、少なくともギフチョウが台湾に産するということは無いと考えて良い。

それにしても、ロスチャイルドや松村松年といったビッグネームも関係する、「台湾のギフチョウ」騒動というのは、日本人の愛蝶家にとっては興味深い話題である。
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絶滅した和歌山・龍門山のギフチョウ [日本の蝶 / Butterflies JAPAN]

絶滅した和歌山・龍門山のギフチョウ

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▲龍門山登山口

春なので、やはりギフチョウの話題を紹介したくなるのがブログ編集子の日本人蝶愛好家たる所以である。かつて絶滅した東京都のギフチョウを紹介したことがあったが、東京都のギフチョウを「東の横綱」とするなら、「西の横綱」として名を挙げて誰もが異論の無いのが和歌山・龍門山のギフチョウだろう。龍門山のギフチョウも、もともと生息していた個体群は絶滅してから30年以上が経った。現在、この山塊で見られるものは大和葛城山で得られた個体群を飼育して、放蝶したものが定着したという見方が強い。(的場, 2003)

龍門山は大河・紀ノ川の南岸に位置し、和歌山県では唯一の生息地であると同時に、近隣産地から飛び離れた分布地として注目されてきた。この地にギフチョウが産することが広く知られるようになったのは戦後間もない頃のようだ。1948年に地元の中学生グループが山頂付近で多数を得て、このニュースを受けて大阪など県外からも多くの同好者が訪れるようになり、春の龍門山はギフチョウを求める人で賑わったという。(後藤, 1996) 

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▲かつて多くのギフチョウが集まったという龍門山山頂

同地は孤立した産地ながら個体数は多かったようで、山頂付近には集中的に飛来する様子が見られたという。このギフチョウの多産地が大きく変貌を遂げたのは1970年代後半になってからのことである。後藤(1996)は減少の原因として山麓で拡大した果樹園の農薬散布とゴルフ場の建設を挙げている。

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▲龍門山産のギフチョウ♂(1983年4月採集:進化生物学研究所所蔵)

上に図示したのは1983年に採集された個体である。龍門山におけるギフチョウの記録は1985年や1986年あたりが最後と考えられているので、この個体は絶滅直前に採集された貴重な資料と言える。

龍門山では、1990年代から地元の自然保護団体などが奈良のギフチョウを放蝶する取り組みを行ったようで、その個体群が定着し、現在ではギフチョウの姿が見られるが、それはもともと生息していた個体群では無い。ちょうど果樹園の農薬なども以前に比べて低濃度の毒性のものが使われるようになったため、ギフチョウが生息できる環境が戻ってきたと指摘する人もいる。

長い年月をかけて孤立して生息するようになった個体群も絶滅するときはほんの一瞬とも言える。現在、日本ではギフチョウも含むさまざまな蝶で多くの地域個体群が危機に瀕しているが、龍門山の悲劇を繰り返さないためには、感情論ではなく、科学的な検証に基づいた減少要因の冷静な分析と的確な対策が求められると思う。

【参考文献】
後藤伸. 1996. 蝶類雑記16 龍門山のギフチョウについて. KINOKUNI 49: 1-5.
的場績. 2003. 龍門山のギフチョウについて. KINOKUNI 63: 9.
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「ジャノメセセリ」とは [世界の蝶 / Butterflies World]

「ジャノメセセリ」とは

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▲ジャノメセセリ Ocella albata (Peru:大木隆コレクション)

 かつて中南米のマルバネカワセミシジミという変わったシジミチョウを紹介したことがあった。日本の愛好家に馴染みの薄い種であったためか好評で、アクセスも多い人気記事となっている。
 今回は中南米のセセリチョウから一風変わったものを紹介したい。眼状紋(ocellus 複数形はoceli)とは、和名でも「蛇の目」とジャノメチョウでお馴染みの目玉模様である。大きな眼状紋は天敵を驚かすため、小さな眼状紋は天敵の攻撃をそこに集中させることで頭部や胸部など重要な体の部位を守るため、などと説明されることが多い。眼状紋はタテハチョウ科の種に幅広く見られるが、面白いことに他の科では顕著な例は余り多くない。
 中南米のセセリチョウ科の小属Ocellaはその名の通り、眼状紋を持つことから名付けられた属で、本属を設立したEvans(1953)によればアジアではシロシタセセリグループ(Tagiades)に近縁となるTelemiadesグループのNisoniadesサブグループとして分類されている。属の模式種で、上に図示したalbataの他に本属には2種が知られるようだが、いずれも前翅の中室付近に眼状紋を有する。いわば「ジャノメセセリ」とでも名付けたくなる種である。
 ブログ編集子はアジアのチョウばかりいじくっているのだが、アジアには数多くのセセリチョウが居て、透明斑を持つ種は多いが、眼状紋を持つ種は寡聞にして知らない。中南米のこの属が何故眼状紋を持つようになったのかじつに興味深い。

Ocellata albata (Peru) UP.jpg
Ocella albata (Peru; in Mr. Takashi Ohki's collection )

Once, this blog presented an article on a peculiar lycaenid from Central
and South Americas, Banded Cycadian (Theorema sapho).
Probably because the species was hardly known among Japanese butterfly
lovers, the article has become popular, enjoying many accesses.

Today, I would like to introduce an unique hesperiid from Central and
South Americas. Eyespot (ocellus in Latin singular; plural and feminine,
ocella) patterns are familiar design patterns in Japan as well as known
to be found among satyr butterflies (browns). It is often explained that
large eyespot patterns, resembling the eyes of large preditors, scare
the natural enemies whereas small eyespot patterns attract their
attention to the patterns away from the important body parts, e.g. head
and thorax, to save the species when attacked. Eyespots are widely found
on wings among the nymphalid butterflies. Interesting, however, not many
species in other families are known with eyespot patterns.

Ocella, a minor genus among the Central and South American hesperiids,
is apparently named after the eyespot pattens. According to Evans (1953),
who establilshed the genus, it is placed in subgroup Nisoniades in
group Telemiades close to tribe Tagiadini (comprising Tagiades, etc.).
Ocella albata, shown above, is the nomiotypical species of the genus,
which comprises this species and additional two. All have eyespot
patterns around the discal cell of the forewing. Their apparences may
justify us to call them “eyespot skippers”.

The present blogger is mcuh more familiar with Asian butterflies.
Although he knows many Asian skippers with transparent spots, he knows
none which has eyespot patterns. He cannot help being curious but with
no answer yet. Why have the species of this genus from the Central and
South Americas become to have such eyespot patterns?


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チョコレート揚羽蝶 [雑記 / Miscellaenous notes]

チョコレート揚羽蝶

21世紀に入って20年近くが過ぎようとしている。2月上旬、老いも若きも、学童から大人まで、かの国の女性たちは、こぞってにわかショコラティエと化す。同国で年間に消費されるチョコレートの大半は、聖バレンタイン・デーの直前に販売され、さらに多くは作り手の秘密の意図を込められて姿を変えるのだ。

産み出された作品の中には、ときに珍品も混じる。東西文明の食文化融合が産んだ「泡沫芸術」作品かもしれない。かつて写実主義的な珍品が見られたこともあった。

今年また、直近の伝統を継承する三人の乙女たちの合作が、傑作 Papilio scelerisque となって、ある男に届いた。それを口に入れる前に、男は写真撮影を禁じえなかった。

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Papilio scelerisque

A chocolate swallowtail butterfly

Since the 21st century started, nearly two decades have passed. Early February today, many women in Japan--young and old, from schoolchildren to adults--become seasonal chocolatiers. A large proportion of chocolate consumed annually in the country is sold just before St. Valentine's Day, and many pieces are changed into other forms with the chocolatiers' secret intentions.

Rarities may be found among them sometimes. Such may be “ephemeral art” pieces conceived in the amalgamation of food cultures of both western and eastern civilizations. Once we saw a realistic fine work.

This year, three girls inheriting the recent tradition collaborated in making another masterpiece, Papilio scelerisque, and presented it to a man. Before putting it into his mouth, he could not help but photograph it.
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会誌No.76発行される!  [連絡 / General Information]

会誌No.76発行されました! 

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▲最新号No.76の表紙

 当会の会誌Butterfliesの最新号・No.76が発行されました! 今号も注目記事が目白押し! ぜひご一読下さい。まずは目次をUPします。クリックで拡大します。

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▲No.76目次

 本号のトップ記事はNakamura, N. & Seki, Y. Reexamination of Rapala nissa (Lycaenidae, Lepidoptera) and related taxaです。インドから台湾まで広域に分布するシジミチョウの一種、ワタナベシジミ Rapala nissaは、何種か独立種を含むと推測されていたものの、研究が進んでいませんでした。今回、各地から集積したデータの正確な標本をもとに、欧米の博物館に収蔵されているタイプ標本を検討した上で、nissaとされてきたものの中から新たに独立種huangiaenigmaを記載し、nissaの亜種palameraを独立種としました。著者らの長年にわたる資料の集積と、きめ細かい研究がうかがえる力作で、混乱していたワタナベシジミの分類における決定的な文献となるものです。

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▲古いタイプ標本も丁寧に調査している

 続いて紹介するのは昨年末の当会の総会で学会賞に輝いた、アジア産蝶類幼生期の研究では右に出る者のいない当会理事の原田基弘さんを中心とする研究チームの論文です。

Lijun Ma, Harada, M., Yoshida, Y., and Wang Ming. Early stages newly revealed for two Neptis species in northwestern Yunnan, China

 日中の合同研究チームが中国雲南省で行ったフィールドワークの結果、新たに解明されたミスジチョウ属(Neptis)の幼生期が紹介されています。

Yunnan Neptis.jpg
▲新たに幼生期が解明されたNeptis属の食樹

 未解明の幼生期を探索するには長年の経験や勘、それに運がものを言うのですが、原田さんはほとんど寄生蜂なみの眼力で幼生期を解明してしまいます。喜寿を迎えようとしてもなお、アジアの奥地でフィールドワークを続ける姿はまさに日本蝶界のレジェンドそのものでしょう。

 会誌は会員外でも1冊3,500円(送料別)で購入できますので、ご希望の方は下記のメールアドレスまでお申込み下さい。

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2017年度総会・大会のプログラムがほぼ決定!  [連絡 / General Information]

2017年度総会・大会のプログラムがほぼ決定!  

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▲2016年の総会・大会の集合写真

今年の大会では「環境変動が蝶に与える影響」という特別テーマを設け、国内外の知見を紹介します。また、学会賞は「続・アジア産蝶類生活史図鑑」を上梓された五十嵐 昌子氏と原田基弘氏に贈られます。原田氏には「Butterflies of Weixi Yunnan雲南省維西の蝶」と題した特別講演を行って頂きます。

なお準備の都合上、参加希望者は必ず事前にお申し込み下さい!!

2017年度会員総会・大会

【日時】 2017 年12 月2 日(土)11:30 ~ 17:20 ※受付・開場は10:30からです。
【場所】 東京大学理学部2 号館4 階大講堂(文京区本郷)
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▲クリックして拡大してご覧下さい

プログラム ※内容・発表順は今後変更する可能性があります。
10:30- 受付開始・入場
<会員総会> 11:30-12:00

<大会>
13:00-13:10 開会(加藤義臣会長)

【一般講演Ⅰ】
13:15-13:30 片山俊彦「私の居場所は何処ですか?」”Erebiahyagriva Moore,1857について
13:30-13:45 勝山豊 東南アジアの蝶生態のビッグデータと活用法について

13:45-14:00 加藤義臣 ベニシジミの母子関係よりみた青紋発現
14:00-14:15 岩田大生(東京農大・国際農業開発)・大瀧丈二(琉球大・理)  生きたまま蛹の翅組織を長期観察する手法

14:15-14:30 (休憩)

【一般講演Ⅱ】
14:30-14:45 佐々木幹夫 台湾・蘭嶼島におけるコウトウキシタアゲハの日周活動
14:45-15:00 菱川法之 世界の珍蝶シリーズⅡ
15:00-15:15 伊藤勇人(九州大院・地社)・王 敏 (華南農大)・矢後勝也(東京大・総研博) 中国陝西省西部のチョウ類-オオルリシジミ調査と共に-

【特別テーマ:環境変動が蝶に与える影響】
15:15-15:30 宮城秋乃 沖縄県東村高江・国頭村安波の2種のチョウを取り巻く米軍ヘリパッド配備問題
15:30-15:45 高田誠 埼玉県平林寺雑木林におけるヒカゲチョウ類3種の周年経過
15:45-16:00 矢後勝也(東京大・総研博)ほか 最絶滅危惧チョウ類ツシマウラボシシジミの生息域内・域外保全に関する研究
16:00-16:15 Yu-Feng HSU (National Taiwan Normal Uni.) Butterfly surveys in a year with plenty of typhoons, hurricanes, and cyclones


【学会賞受賞記念講演】
16:15-16:25 学会賞授与
16:25-17:15 原田基弘 Butterflies of Weixi Yunnan 雲南省維西の蝶

17:15-17:20 閉会挨拶(矢後勝也副会長)

<懇親会>
18:00~20:00 東京大学銀杏・メトロ食堂(法文2号館地下)※昨年と別の会場です。
 ・ことしもチャリティー・オークションを開催する予定です!!
 ・豪華食事をご用意・お酒もほとんど飲み放題!!

【参加費】
総会・大会:会員は無料、会員外(ただし学生を除く)は1,000円
※なお、学生は会員外でも無料です。是非お越し下さい。(懇親会は有料です!)

懇親会:会員・非会員とも一般5,000円、学生3,000円
    ※豪華食事付き! お酒もほとんど飲み放題!!

【申し込み方法】
★参加ご希望の方は、必ず事前に下記のいずれかの方法で申し込みをお願いします。

1.メールの場合は…bsj@shobix.co.jp  

2.電話の場合は… 03-3812-5223(番号をお間違えなく!!)

3.郵便の場合は… 〒113-0001 東京都文京区白山1-13-7 アクア白山ビル5F 勝美印刷(株)内 「日本蝶類学会」事務局 宛て  
※郵便の場合、お手数ですがハガキもしくは封書は皆様の方でご用意下さい。

申し込み締め切り:11月25日(土)19時必着!! 

以上です。プログラムは多少の変更がある可能性もありますが、その場合は速やかに当ブログで告知しますので、今後当ブログにご注意下さい。

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会誌No.75発行される!  [連絡 / General Information]

会誌No.75発行されました! 

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▲最新号No.75の表紙

 当会の会誌Butterfliesの最新号・No.75が発行されました! 今号も注目記事が目白押し! ぜひご一読下さい。まずは目次をUPします。クリックで拡大します。

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▲No.75目次

 当会の会誌の記事は海外の蝶の話題が多いのですが、今号ではぜひ紹介したい日本の記事があります。掉尾を飾った宇野彰さんの「日野春はなぜ「蝶の楽園」だったのか?」です。

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▲日野春はなぜ「蝶の楽園」だったのか?画像その1 

 このオオムラサキが樹液に集まっている画像を見て、「懐かしい」と思う読者の方も多いかも知れない。あるいは「ことしも見たよ」という方もおられるかもしれない。特に関東甲信越で蝶を追いかけている研究者、愛好者にとって「日野春」は一種どこか聖地のような響きをもって感じられる。宇野さんの論文は、地史的、人文科学的考察を加えながら、日野春がどうして多様な蝶の棲む場所となったのかを考察したものである。

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▲日野春はなぜ「蝶の楽園」だったのか?画像その2

「日野春」は山梨県の甲府盆地の北の外れに位置し、古くから蝶をはじめとする昆虫類の豊富な場所として知られてきた。中でも国蝶オオムラサキの多産は特筆に値するもので、多い年にはクヌギの樹液に数十から数百頭の集団が見られるほどである。このほかにもクロミドリシジミやダイセンシジミ、ムモンアカシジミといったゼフィルス類、クロヒカゲモドキやキマダラモドキなどのジャノメチョウの仲間、果てはゴマシジミ、チャマダラセセリ、ミヤマシジミ、ヒメシロチョウといった草原性の種まで、じつに多彩な種が初夏から盛夏の日野春を賑わしていた。「いた」と過去形で書いたのも、これらの多くの種が現在では大きく数を減らすか、あるいは既に姿を消して久しいからである。この原因についての考察は宇野さんの論文に譲りたい。

 ブログ編集子もご多分に漏れず日野春に何度も足を運んできた。中学生の頃、身体に不似合いな長い竿を振り回して遙か梢のゼフィルスを追ったこともあれば、お盆を過ぎた頃に伐採地の外れで真っ青で大きなゴマシジミを見つけ、急斜面をものともせず息を切らせて追いかけたもののついに逃がしてしまったことも懐かしい。
 長い時間が過ぎて、未だにブログ編集子が飽きもせずに蝶を追いかけているのも、あの夏の日に日野春の雑木林で逃がした蝶の幻影を追い求めているからなのかもしれない。

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緋色の研究~ヒイロシジミ属について(その1) [世界の蝶 / Butterflies World]

緋色の研究~ヒイロシジミ属について(その1)

 ヒイロシジミ属(Deudorix)は近縁属にトラフシジミ属(Rapala)、イワカワシジミ属(Artipe)、ツヤモントラフシジミ属(Virachola)などを含み、研究者によって分類も差がある。骨太な感じのするシジミチョウの仲間で、多様な種を含み、研究テーマとしては中々興味深い。本属の種を多く所蔵されている会員の柳下昭氏の協力で、以下何回かに分けて本属の紹介をしてみよう。

 まず本属の代表的な種で、国内でも南西諸島で記録されたことのあるヒイロシジミ(Deudorix epijarbas)の多彩な変異について紹介しよう。

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▲Sipora島のDeudorix epijarbas

 上に示したのはインドネシア・シポラ島のヒイロシジミである。これらは1月から3月にかけて得られたものであるが、その斑紋構成は特に翅表の緋色斑の発達度合いが大きく異なっている。裏面の波状模様は発達の強弱はあるものの共通している。

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▲Bali島のDeudorix epijarbas

 さらに上掲の個体はバリ島で得られたものである。裏面の白色部が大きく発達し、一見すると別種のようにも見える。ところがこの白斑の発達具合は段階的で、同所的に減退するものから図示したように大きく発達するものでさまざまである。

 ここからいつものコレクターC氏と専門家T氏の問答を始めよう。
C:ヒイロシジミですか? 東南アジアで、梢の上でテリトリーを張っているシジミを見つけて、「これは珍品かも知れない」と思って、長竿を用意し、一発で仕留めなければ逃げられると思って、タイミングを計ってネットを一閃。確かな手応えと共に「何だろう」と思ってドキドキハラハラしながら眺めてみると大抵この種なんですよね。いっぺんに「この苦労は何だったんだろう」と思うと、ドッと疲れが込み上げて来ます。
T:でもDeudorix属は非常に奥が深いですヨ。このDeudorix属はアフリカから東南アジアを経てソロモン諸島まで分布しています。台湾やフィリッピン、東南アジアのDeudorixepijarbasを除いて、他の種は珍品が多いですヨ。中には極珍種もたくさんいます。「ヒイロシジミ」と言う割に、裏面がepijarbasと同じでも表面がブルーのものも居るんですよ。
C:表面や裏面がほぼ同じでもいろいろな種が居るのですか?
T:東南アジアだけではepijarbasばかりでしょうね。だけど、ウオーレス線から東側には表面も裏面もepijarbasとほぼ同じ模様でも別種とされるものが沢山居ます。それも同じ場所で4~5種も採れるのです。
C:上で見せてもらいましたが、何かド普通種と言われるepijarbasだけでも別のものに見えて来ますネ。
T:そうなのです。東南アジア各地で得られるepijarbasもよく見ると、裏面の色合いが微妙に異なり、各島で亜種名が付いています。でも同じ色合いのものが別の島々でも得られて、同じ島でも色合いが分かれるものが有りますので、今後誰かがまとめる必要が有ると思います。今回は入門編としてepijarbasの変わったパターンの標本をお見せしました。嫌わないで興味深く見ていただければ面白い事請け合いです。Deudorix属の大変奥は深いですヨ~~。
(つづく)

注記:なお上掲図のSipora島のヒイロシジミ右側の上下の個体はスタウディンガーヒイロシジミ Deudorix staudingeri H. H. Druce, 1895という別種であるという見解もシジミチョウの専門家である当会の関康夫副会長から出されていることを附記しておきたい。柳下氏は所蔵のコレクションを多数検した結果、スタウディンガーヒイロシジミはヒイロシジミと同種であるという立場を示している。名著「ボルネオの蝶」(飛島建設. 1991 なお関氏も共著者である)には、特にスタウディンガーヒイロシジミの♀はヒイロシジミと区別が困難であるという記述もある。今後のさらなる研究に委ねたい。
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進化中!? 同定困難なカザリシロチョウ [世界の蝶 / Butterflies World]

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▲とても不思議なDelias

進化中!? 同定困難なカザリシロチョウ

会員の某氏より、たいへん興味深い画像を提供頂いたので紹介してみたい。これは言わずと知れたカザリシロチョウ、Deliasの標本である。この標本を正しく同定するためにはどういうキーで判別するのか? コレクター某氏(C)と専門家某氏(T)の問答で描いてみよう。


C: こんな写真が手に入ったのですが、これは何か判りますか?
T: これはシロチョウ科デリアス属ですね。斑紋からニューギニア島の高地に棲息する♂ですね。
C: 斑紋からすると何という名なのですか?
T: タルボットの第8群、Iltisグループの1種ですね。
C: でも斑紋を見ると種の特徴が混ざっている様に見えるのですが?
T: 後翅基部のデリアス紋が種を殆ど特定する上で今までは役立っています。
C: そうするとデリアス紋の中の斑紋は黄色の横棒なので、Delias mesoblemaでしょうか?
T: でも、デリアス紋が涙的形状をしているので、Delias arabuanaに近いかも知れません。
C: でも色は黄色ですが?
T: デリアスはよく赤が黄色に変化する個体が現れます。
C: 後翅外縁を取り巻く黒三角の紋はどっちかと言うとDelias iltisです。
T: 亜外縁の黒帯は太いのでDelias luctuosaです。前翅翅頂部の黒帯も中室まで掛かっています。
C: でも黒帯の中の黄色点紋はどちらかというとDelias flavistrigaawongkorに似ています。
T: それと後翅亜外縁の黒帯の中の黄色点班は色がやや薄いのでDelias mesoblemaに近いです。この個体はIltisグループの特徴を殆ど兼ね備えている個体だと思います。ヨーロッパの研究者の中には、ニューギニアのデリアスは日々進化している属ではないかと言われています。
C: そうすると種を分ける為にはゲニタリアかDNAの調査が必要ですか?
T: ゲニタリアの調査はたった1つの個体で確定するのは危険です。いくつかの個体を調査すべきです。またDNAは斑紋がこんなに近いのですから、上手く差が出るかどうか。また差が出ても大差でないと今まで挙げた種と区別出来ない場合があります。従って人間が勝手に決めた『種』という概念に対し、疑問を呈する学者が出て来ています。同様なKummeriグループを見てみればほぼ似通った種が示されてしますので、同様な疑問が湧いてきます。
C: 自然は人間が気づかない様な多くの多様性を持っているのですね。
T: だから私達はこれらの解明の為にもっと多くの資料標本が必要なのです。

いかがだろうか? ニューギニア島のDeliasは現在も進化している真っ最中と考える人もいて、その斑紋の多様さ、変異巾には驚かされる。


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夏の静岡フォーラム盛会で終了! [連絡 / General Information]

夏の静岡フォーラム盛会で終了!

8月5日、静岡市の「ふじのくに地球環境史ミュージアム」静岡昆虫同好会との共催で当会の夏のフォーラムが開催されました。ミュージアムのイベントと連動して開催したので、夏休みのお子さんたちにも参加していただきました。
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▲静岡昆虫同好会の諏訪哲夫会長による講演
トップバッターは静岡昆虫同好会の諏訪哲夫会長による静岡県の蝶の衰亡について。圧倒的な緻密なデータをもとに、減少の著しい種について各種ごとの実情を解説していただきました。思いの外多くの種が危機的な状況にあることがよく分かりました。
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▲矢後勝也副会長の一般向け講演
当会の矢後勝也副会長には、子供にもわかりやすい内容で、驚くべき蝶、昆虫の世界を説明していただきました。現在ではチョウとして扱われている南米のシャクガモドキなどは、実物の標本を回覧して理解を深めてもらう、きめ細やかな講演でした。参加した子供たちからはたくさんの質問が寄せられ、夏休みの良い勉強になったのではないかと思います。
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▲特別講演は「蝶聖」髙橋真弓先生でした
そして最後に行われた特別講演は日本の蝶研究のレジェンド、髙橋真弓先生でした。ふじのくに地球環境史ミュージアム准教授の岸本年郎さんがナビゲーターとなり、髙橋先生が蝶と向き合ってきた人生を振り返っていただく形式で進められました。髙橋真弓先生が蝶に関心を持つことになったきっかけ、先生たちのグループが編纂した歴史的名著「原色日本蝶類生態図鑑」(保育社)の裏話、多くの碩学との交流、80歳を過ぎても元気で蝶と向き合える秘訣などなど、時間が惜しいくらいでした。

ご参加いただいた皆さん、全面的にご協力いただいたふじのくに地球環境史ミュージアム、静岡昆虫同好会の皆様に厚く御礼申し上げます。


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